「近隣への挨拶は着工の前日で十分」は本当?大規模修繕の足場が隣の敷地にかかるとき、民法が求める『事前の通知』と2週間の目安

皆さま、こんにちは!株式会社KYOEIです。

大規模修繕の工程表を理事会で読み合わせていると、着工日の前の欄に「近隣挨拶」と一行だけ書かれていることがあります。隣は戸建てのお宅で、境界のブロック塀からマンションの外壁までは1メートルほど。足場の一部がどうしても隣の敷地の上に出る。そのとき、挨拶は着工の前日に菓子折りを持って回れば足りるのか、という相談を受けることがあります。

この記事では、2023年4月に変わった民法の隣地使用のルールと、高い足場に必要な届出の期限から、近隣への挨拶をいつ、誰に、何を伝えるかを書きます。

先に答えを書きます

足場や作業員が隣の敷地に入るなら、近隣への挨拶は礼儀だけの話ではなくなります。民法第209条は、隣地を使う人に、目的、日時、場所、方法をあらかじめ隣地の所有者と使用者へ通知するよう定めています。法務省は、急ぐ事情がなければ通常は2週間程度前を目安に示しています。高さ10メートル以上で60日以上立つ足場は、施工会社が工事開始の30日前までに労働基準監督署へ届け出ます。工程表では、届出、挨拶、着工の順に日付が入っているかを確かめてください。

隣の敷地に足場がかかるとき、民法は何を求めているのか

民法第209条は、隣の土地を使うときのルールです。2023年4月1日に改正法が施行され、中身が大きく変わりました。

改正前の条文は、境界の近くで塀や建物を築いたり直したりするため必要な範囲で、隣地の「使用を請求することができる」という書き方でした。法務省は、この「請求することができる」の意味がはっきりせず、隣地の所有者が見つからない場合などに対応が難しかったと説明しています。

いまの条文はこうです。

「土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。」

目的の1つめに「境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕」が挙がっています。境界ぎわの外壁を直すための足場は、この修繕にあたると考えられます。

ただし、使える範囲には条件がついています。第2項は、使用の日時、場所、方法を、隣地の所有者と、隣地を実際に使っている人のために「損害が最も少ないもの」から選ぶよう求めています。第3項が通知の決まりで、第4項は、隣地の側に損害が出たときは償金を請求できると定めています。

ここで気をつけたいのは、通知の相手が2通りあることです。隣が貸家なら、持ち主の大家さんと、住んでいる借主の両方に知らせることになります。挨拶に回る先を、表札だけで決めないでください。

「あらかじめ」は、どれくらい前のことか

条文は「あらかじめ」としか書いていません。

日数の目安は、法務省の改正法の解説資料にあります。通知の相手が準備をするのに足りる合理的な期間を置く必要があり、「事案によるが、緊急性がない場合は通常は2週間程度」とされています。洗濯物を干す場所を変える、車の置き場所を考える、植木を移す。隣の方にとって、2週間はそうした段取りを組むための時間です。

例外もあります。あらかじめ知らせるのが難しいときは、使い始めたあと遅滞なく通知すればよいとされ、資料は例として「建物の外壁が剥落する危険があるとき」を挙げています。隣地の所有者が調べても分からない場合も、判明してから知らせれば足ります。

もう1つ、資料ははっきり書いています。隣地を使う権利がある場合も、一般的に自力執行は禁じられており、使用を拒まれたら妨害禁止の判決を求めることになる、と。権利があるからといって、断られた足場を押し通して組めるわけではありません。

マンションの大規模修繕は、通常は前もって予定を組める工事です。急迫の例外にはあたりにくく、話がこじれれば工程そのものが止まります。2週間はあくまで目安です。隣に足場がかかる面があるなら、施工会社が決まった段階で一度顔を出しておくほうが、あとの話は進めやすくなります。

足場が60日を超えると、工程はもう一段前に延びる

近隣への挨拶とは別に、足場そのものにも期限のある手続きがあります。

労働安全衛生法第88条第1項は、事業者が届出の対象となる設備を設置するとき、その計画を「当該工事の開始の日の三十日前までに」労働基準監督署長に届け出るよう定めています。足場がこの対象になるのは、労働安全衛生規則の別表第七で、つり足場と張出し足場以外は高さ10メートル以上のものです。さらに同規則第85条は、組立てから解体までの期間が60日未満の足場を届出の対象から外しています。ただし、労働基準監督署長の認定を受けた事業者は届出が要りません。

届け出るのは施工会社で、管理組合ではありません。それでも管理組合が知っておく意味はあります。

マンションの足場は、この2つの線を超えることが多いからです。国土交通省の令和3年度の実態調査では、集計した818件の工事のうち、5階未満の建物は22.5%で、5階以上が76.3%を占めていました。仮に1階あたりの高さを3メートルとすると、4階建てで外壁の高さは12メートルになります。60日の線を超えるかどうかは規模と工程で変わるので、工程表で足場の組立てと解体の日付を見てください。

工事開始の30日前に届出がある工事では、それより前に足場の配置図ができていることになります。隣の敷地にかかる位置もそこで決まります。近隣に知らせる「場所と方法」は、この図面を見れば具体的に書けます。

堺市内の現場なら、届出先は堺労働基準監督署です。大阪労働局の管轄一覧では、堺署の管轄は堺市となっています。高石市は泉大津署、大阪狭山市と松原市は羽曳野署と、隣の市では窓口が変わります。

挨拶で何を、誰に伝えるか

民法の通知の4項目は、そのまま挨拶状の骨組みに使えます。

目的:外壁や防水の改修のため、境界ぎわに足場を組むこと
日時:足場を組む日と外す日、作業する曜日と時間帯
場所:隣地のどこに、どの幅で足場や養生シートがかかるか
方法:作業員が立ち入る範囲、塗料の飛散を防ぐ養生、資材の置き場

これに、工事中の連絡先を加えます。管理組合の窓口と施工会社の現場責任者の両方を書いておくと、隣の方が「どちらに言えばよいのか」で迷いません。

足場が自分の敷地の中に収まり、隣地に入らない場合は、民法第209条の通知の義務はかかりません。それでも、足場の組み立てと解体の音、高圧洗浄の水しぶき、車両の出入りは隣にも届きます。期間と連絡先を伝えておく意味は変わりません。足場が道路にはみ出すときの許可や、隣家との距離が1メートルを切る場合の足場の扱いは、狭い場所の足場と隣家との1メートルの記事で書きました。戸建ての工事で当社が行っている近隣対策は、外壁塗装の近隣トラブルを防ぐ当社の対策にまとめています。

工程表に、日付が3つ並んでいるかを見る

理事会で工程表を受け取ったら、着工日の前に、足場の計画届、隣地への通知と挨拶、着工の3つの日付が順に入っているかを確かめてください。隣の敷地に足場がかかる面があるなら、挨拶は前日ではなく、2週間前を目安に置きます。相手が貸家なら、持ち主と住んでいる方の両方に届くようにします。

株式会社KYOEIは、大阪府堺市西区堀上緑町2-2-15を拠点に、堺市7区と大阪府南部でマンションの大規模修繕を手がけています。施工実績には双葉シティプラザ大規模修繕工事を載せています。境界ぎわの足場の組み方や近隣へのご案内の段取りから相談したい管理組合の方は、072-349-3278までお電話ください。