「コンサルタントに任せれば安心」は本当?大規模修繕の8割が使う方式と、国が挙げた3つの事例

皆さま、こんにちは!株式会社KYOEIです。

修繕委員会が3回目にさしかかるころ、管理会社から一枚の紙が回ってきます。設計コンサルタントの候補が3社。会社名と見積金額が並び、いちばん安い欄に付箋が貼ってあります。

その場で決まりかけます。

理事の任期は1年です。次の総会までに工事の骨格を固めておきたい。ただ、この3社が何をどれだけ引き受けるのかは、金額の欄からは読めません。国土交通省が公表している調査には、コンサルタントが何にどれだけ時間を使っているかが数字で出ています。それを知ってから見ると、同じ紙が違って見えます。

先に答えを書きます

国土交通省の令和3年度の調査では、集計した818件の大規模修繕のうち80.1%が設計監理方式でした。コンサルタントを立てて施工会社を選ぶやり方が、いまの主流です。

そのうえで国は、平成29年と令和5年の2度、コンサルタントの中立性について通知を出しています。管理組合の側で確かめられるのは、見積金額ではありません。業務量と、選び方の2つです。

コンサルタントは、工事の何を引き受けているのか

設計コンサルタントという呼び方は、建物を調べて図面を描く人を思わせます。実際の中身は、もう少し後ろに重心があります。

同じ令和3年度の調査に、業務量の内訳が出ています。335件分を集計した割合です。

  • 調査・診断 15.0%
  • 設計 24.3%
  • 施工会社選定への協力 9.1%
  • 工事監理 47.9%
  • 長期修繕計画の見直し 2.2%
  • その他 1.4%

工事監理が半分近くを占めています。

工事監理は、着工してからの仕事です。図面や仕様書のとおりに施工されているかを、施工会社とは別の立場で確かめます。下地の補修が終わった段階で写真を撮り、シーリングの打ち替えた長さが数量書と合っているかを見て、塗料の缶の数を数える。足場が解けたあとでは確認できない箇所ばかりです。

コンサルタントへ払う費用のおよそ半分は、着工後に現場へ足を運ぶ回数への対価です。契約前に出てくる資料が立派かどうかで決めると、この半分は見えません。

国が2度、同じことを書いて出した

平成29年1月27日、国土交通省は「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について」という通知を出しました。相談窓口を知らせる文書ですが、別紙に不適切な事例が3つ載っています。

  • 最も安価な見積金額を提示したコンサルタントに業務を依頼したが、実際に調査診断や設計を行っていたのは、そのコンサルタントの職員ではなく施工会社の社員だった
  • 設計会社が、施工会社の候補5社のうち特定の1社の見積金額が低くなるよう、その1社にだけ少ない数量の工事内容を伝えていた
  • 一部のコンサルタントが、自社にバックマージンを支払う施工会社が受注できるように不適切な工作を行っていた

1つ目をもう一度読んでください。金額がいちばん安かった理由が、そこに書いてあります。

令和5年4月3日には「マンション大規模修繕工事の発注等の適正化について」という通知が出ています。設計監理方式を採るときは、設計コンサルタントが利益相反行為を起こさない中立的な立場を保つ形で、施工会社の選定が公正に行われるよう留意する必要がある。そういう趣旨です。法定福利費が内訳明示された見積書かどうかを確かめること。これも同じ通知に書かれています。

6年の間を空けて、国は同じ論点をもう一度書きました。1度では終わらなかったということです。

見積書で比べるのは、金額よりも時間

国土交通省が平成30年5月に初めて公表した実態調査は、直近3年間の944事例を集めたものでした。このとき、管理組合が見るべき観点も一緒に示されています。そのうちの1つがこれです。設計コンサルタントの業務量が著しく低く抑えられていないか。とくに業務量のウェートの多くを占める工事監理の業務量が低すぎないか。

金額ではなく業務量を見なさい、と書いてあります。

では、どれくらいが普通なのか。令和3年度の調査に分布が載っています。設計コンサルタント業務の合計業務量は、中央値が130.1人・時間でした。下位25%の値が79.0、上位25%の値が223.5です。この調査は1日の業務量を8時間として数えているので、中央値は16日ほどにあたります。

調査診断から工事監理まで全部含めて、16日。

この数字を持って見積書に向かうと、聞くことが決まります。御社の金額は何人・時間の想定ですか。工事監理では現場立ち会いを何回見込んでいますか。書かれていないなら、書いてもらいます。3社の紙が同じ様式で並んで、そこで初めて比べたことになります。

選び方のほうにも数字があります。コンサルタントをどう選んだかという設問では、見積合わせ方式が53.3%でした。特命随意契約方式は、初めての受託が5.8%、前回と同じ相手へのリピート受託が10.5%です。

回数で見ると、この数字は動きます。1回目の大規模修繕でリピート受託は3.4%ですが、3回目以上になると28.9%まで上がります。前回と同じコンサルタントに続けて頼む組合が、3回目以降は4分の1を超えます。

続けて頼むこと自体を否定はしません。建物の履歴を知っている相手は、実際に話が早い。ただし、比べる機会はそこで消えています。選び直さなかった理由を議事録に残る形で一度議論しておくと、次の理事会が楽になります。

堺市の管理組合が、無料でマンション管理士に会える日

中立の意見をどこで聞くか、という問題が残ります。管理会社に聞けば管理会社の立場があり、私たち工事会社に聞けば工事会社の立場があります。

堺市には、住宅専門家相談という無料の窓口があります。相談は4つの区分に分かれていて、そのうち「管理相談」をマンション管理士が担当します。マンション関係のトラブルや管理についての相談です。毎月最終水曜日の午後1時30分から3時30分まで、場所は堺市役所高層館14階の会議室。管理相談の枠は1件50分です。申し込みの受付は相談実施日のおよそ6週間前から始まります。電話は072-228-8215です。

堺市分譲マンション専門家派遣事業という制度もあります。マンション管理士を管理組合へ派遣するもので、1年度につき原則6回まで、派遣そのものは無料です。ただし対象が絞られています。管理組合の実態がない、管理規約を作成していない、修繕積立金を積み立てていない、長期修繕計画がないなど、7つの要件のいずれかに当てはまる管理組合が申し込めます。こうした状態の改善が目的の制度なので、実務的な調査や見積り、設計は対象外です。市の資料には、今年度の派遣は3件程度を想定しているとも書かれています。

コンサルタント選びそのものを持ち込む先としては、派遣事業よりも住宅専門家相談のほうが近いはずです。ただし相談の日は月に1回しかありません。委員会の日程を組むときに、先に押さえておく類のものです。

私たちが手がけた高見住宅25・44号館外壁部分改修その他工事のような現場では、足場を架けたあとで数量が動きます。図面と実物が食い違う箇所は、必ず出てきます。工事監理の回数を削った見積書を私たちが警戒するのは、そこを誰も見ないまま工事が進むからです。

3社の紙に、もう1列足してください

次の委員会までにできることがあります。候補のコンサルタントに、業務量を人・時間で出してもらう。工事監理で見込んでいる立ち会いの回数を、数字で書いてもらう。この2列を足した表を作ると、金額の順位が入れ替わることがあります。

総会で4分の3の賛成をどう数えるかも、見積書の「一式」に何が隠れているかも、行き着く先は同じです。数字にして並べないと、比べたことになりません。

株式会社KYOEIは、大阪府堺市西区堀上緑町2-2-15から、堺市7区と大阪府南部で大規模修繕、外壁塗装、防水工事、雨漏り修理に伺っています。コンサルタントを立てる前でも後でも、建物の現況を見せてほしいという依頼は受けています。電話は072-349-3278です。