「ひび割れは0.3ミリまでなら平気」は本当?国の基準が幅の数字を出す建物と、出さない建物
皆さま、こんにちは!株式会社KYOEIです。
外壁を見上げていたら、窓の角から斜めに細い線が伸びていた。スマートフォンで撮って拡大しても、髪の毛くらいなのか、もっと太いのかが分かりません。検索すると「0.3ミリ以下なら心配ない」と書いてあるページが次々に出てきます。
その0.3ミリには、たしかに出どころがあります。国が定めた告示の中の、ある表の、ある行です。
ただ、その表を開くと、0.3ミリが書いてある欄と、幅の数字が1つも書いていない欄に分かれています。どちらに入るかは、建物の造りで決まります。
答えから書きます
0.3ミリと0.5ミリという線が引かれているのは、鉄筋コンクリート造と鉄骨鉄筋コンクリート造の住宅です。分譲マンションがここに入ります。
木造住宅の欄には、幅の数字が1つも出てきません。仕上げの層だけで止まっているのか、下地や構造の材まで届いているのかで見ます。
そしてこの基準が想定しているのは、新築から10年以内で、建設住宅性能評価書が交付された住宅の紛争です。築20年の家のひび割れに、そのまま当てる数字ではありません。
幅の数字は、紛争処理の参考基準の中にあります
出どころは、平成12年7月19日建設省告示第1653号「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」です。最後に改正されたのは平成18年2月23日の国土交通省告示第308号。
何のための基準か。冒頭にこう書かれています。
この基準は、住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成11年法律第81号)第74条に規定する指定住宅紛争処理機関による住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準として、不具合事象の発生と構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性との相関関係について定めるものとする。
平成12年建設省告示第1653号 第1 趣旨
住宅の品質確保の促進等に関する法律の第74条は、国土交通大臣が「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」を定める、と書いた条文です。瑕疵(かし)は欠陥のこと、構造耐力上主要な部分は建物を支えている壁や柱や基礎のことです。
つまりこの表は、建物が危ないかどうかを測るためではなく、あっせんや調停の席で委員が参考にするために作られています。
適用の範囲も限られています。
新築時に建設住宅性能評価書が交付された住宅で、指定住宅紛争処理機関に対してあっせん、調停又は仲裁の申請が行われた紛争に係るものにおいて発見された事象であること。
当該住宅を新築する建設工事の完了の日から起算して十年以内に発生した事象であること。
同告示 第2 適用範囲
建設住宅性能評価書は、工事の途中で現場を検査したうえで交付される書面です。令和6年度の新設住宅着工戸数は816,018戸で、このうち建設住宅性能評価書が交付された新築住宅は191,091戸でした。国土交通省が令和7年6月27日に公表した数字です。4戸に1戸には届きません。
0.3ミリという線は、この範囲の中の数字です。
0.3ミリと0.5ミリが出てくるのは、鉄筋コンクリート造の欄です
告示の表は部位ごとに分かれています。外壁が入るのは「壁、柱、床、天井、はり又は屋根」の表です。基礎のひび割れは別の表で扱われます。
同じ表の中で、仕上げが乾式か湿式かによって、さらに行が分かれます。湿式はモルタルや塗り壁、乾式はサイディングのような板ものです。
鉄筋コンクリート造で湿式の仕上げがしてある壁の行には、こう書かれています。
仕上材と構造材にまたがった幅0.3mm以上0.5mm未満のひび割れ
同告示 別表(抜粋)
この行に対応する「構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性」の欄は「一定程度存する。」です。幅が0.5mm以上の行になると「高い。」に変わります。どちらにも当たらないひび割れは「低い。」です。
ここで効いているのは、幅の前に置かれた「仕上材と構造材にまたがった」という条件です。塗膜やモルタルの層だけで止まっている線は、0.4ミリあってもこの行に入りません。コンクリートの本体まで続いているかどうかを見ます。
幅に関係なく、いちばん上の段に置かれている事象も1つあります。
さび汁を伴うひび割れ
同告示 別表(抜粋)
茶色い筋が垂れているなら、中の鉄筋が錆びて膨らんでいます。線の太さを測る話ではありません。その先はコンクリートが欠けて鉄筋が見える段階につながります。
木造住宅の欄に、幅の数字は1つもありません
同じ表で木造住宅の行に目を移すと、数字が消えます。
モルタル外壁のような湿式の仕上げでは、中段が「乾式の下地材又は構造材の表面まで貫通したひび割れ」、上段が「仕上材と乾式の下地材又は構造材にまたがったひび割れ」。幅は書かれていません。
サイディングのような乾式の仕上げも同じです。中段は「複数の仕上材にまたがったひび割れ」。板1枚の中で収まっているか、隣の板まで続いているかで分かれます。
木造の欄が見ているのは、深さと広がりです。
堺市でどちらの建物が多いか。令和2年の国勢調査では、住宅に住む一般世帯361,869のうち、一戸建が167,340世帯、共同住宅が185,916世帯でした。市全体ではほぼ半々です。
区で見ると偏ります。
- 美原区:一戸建11,889世帯、共同住宅2,435世帯
- 中区:一戸建30,216世帯、共同住宅18,633世帯
- 北区:一戸建22,544世帯、共同住宅47,868世帯
- 堺区:一戸建25,577世帯、共同住宅44,372世帯
美原区と中区は戸建ての街、北区と堺区は共同住宅の街。同じ「外壁にひび割れが出た」という電話でも、最初に聞くことが変わります。戸建てなら、線が板の中で収まっているか。共同住宅なら、さび汁が出ていないか。
国が「この基準では見ない」と外した場所があります
告示には留意事項が付いています。そこに、ひび割れが出ていてもこの基準を参考にしない場所が挙がっています。
ひび割れ誘発目地に発生したひび割れ若しくは欠損又はひび割れ誘発目地から連続したひび割れ若しくは欠損
同告示 第4 留意事項
ひび割れ誘発目地は、コンクリートの壁にあらかじめ入れておく細い溝です。コンクリートは乾くときに縮みます。縮む力の逃げ場を先に作っておき、ひび割れをその溝の位置に集める。設計どおりに働いた結果が、目地に沿った線です。屋上の伸縮目地と考え方が似ています。
もう1か所、持ち出した床の先端も外されています。
はね出し縁 (バルコニー、片廊下その他これに類するものをいう。 )の床の先端部分に発生したひび割れ又は欠損
同告示 第4 留意事項
ベランダや片廊下の先は、もともと動きが出る場所です。材料の違う部材どうしのつなぎ目も、同じように外されています。
そして留意事項の最後に、この一文があります。
この基準は、構造耐力上主要な部分における瑕疵の有無を特定するためのものではないため、レベル1に該当しても構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する場合があり、また、レベル3に該当しても構造耐力上主要な部分に瑕疵が存しない場合もあること。
同告示 第4 留意事項
国が自分で3段階の線を引いたうえで、その線で白黒は決まらないと書いています。0.3ミリを下回っていても欠陥がある場合があり、0.5ミリを超えていても欠陥がない場合がある。幅だけを頼りにできない理由は、基準そのものの中に書かれています。
幅を測る前に、どこに出ているかを見てください
ひび割れの幅は、クラックスケールという目盛りの入った薄い板を当てて測ります。写真だけでは寸法が出ません。スマートフォンで撮るなら、硬貨でも定規でも、大きさの分かるものを横に置いてください。
測ったあとに見るのは、場所と向きです。窓やサッシの角から斜めに伸びているか、階の境を横に走っているか、目地に沿っているか。同じ0.4ミリでも、出ている場所で意味が変わります。
放っておくとどうなるかのほうでも書きましたが、壁に入った水はしばらく表に出てきません。
株式会社KYOEIは大阪府堺市西区堀上緑町2-2-15を拠点に、堺市7区と大阪府南部で外壁塗装、防水工事、大規模修繕、雨漏り修理を手がけています。出城第2住宅1号館外壁改修その他工事のような集合住宅の外壁も、モルタル外壁の一戸建ても、ひび割れの出方から見ていきます。
壁の線が気になったら、硬貨を横に置いた写真を1枚送ってください。電話は072-349-3278です。