「コンクリートが欠けただけ」は本当?中から鉄筋が見える『爆裂』が決まった場所から出る理由

皆さま、こんにちは!株式会社KYOEIです。

外廊下の天井や、ベランダの手すり壁の下側。コンクリートが手のひらほど欠けて、奥から茶色い棒が2本、3本と見えていることがあります。

管理会社に伝えれば、モルタルで埋めてもらえます。上から塗れば跡は消えます。

それが1年半ほどでまた膨らみ、同じところが欠ける。

このやりとりを2回、3回と繰り返している建物があります。埋め方が下手だったわけではありません。埋める前の手順が1つ抜けています。

欠けているのは表面です。進んでいるのは中です。中で何が起きていて、なぜ建物の同じ場所ばかりに出るのか、順に書きます。

先に答えを書きます

コンクリートが欠けて中の鉄筋が見える状態を、現場では爆裂(ばくれつ)と呼びます。火や熱とは関係ありません。中の鉄筋が錆びて太くなり、周りのコンクリートを内側から押し割った跡です。

錆びた鉄筋を残したまま表面を埋めれば、錆は中で膨らみ続けます。同じところがまた欠けます。

出てくる場所も偏っています。ベランダの手すり壁の先端、庇(ひさし)の先、外廊下の天井、屋上まわりの立ち上がり。コンクリートが薄い部材に集まります。

錆びた鉄は、もとの鉄より太くなる

打ち上がったばかりのコンクリートは、強いアルカリ性です。pH という数値でいうと12から13ほどあります。

このアルカリ性が、鉄筋を守っています。強いアルカリの中に置かれた鉄の表面には、不動態皮膜という目に見えない膜ができます。膜がある限り、鉄は水と酸素に触れても錆びません。鉄筋コンクリートという材料が成り立っているのは、この膜のおかげです。

ところが、空気中の二酸化炭素がコンクリートの中へ入っていきます。二酸化炭素はアルカリ性の成分と反応し、その部分のアルカリ性を打ち消します。これを中性化といいます。表面から始まり、年を追って内側へ進みます。

pH がおおむね11を下回ったあたりで、膜は保てなくなります。

そこから先は、鉄が錆びるという普通の話です。ただし場所が悪い。錆びた鉄は、もとの鉄よりかさが増えます。おおよそ2倍から2.5倍です。

コンクリートは押される力にはとても強く、引っ張られる力には弱い材料です。内側から押し広げられれば、ひび割れます。割れ目から水と酸素がさらに入り、錆はもっと進みます。

外に出るサインは、欠けるより先に現れます。ひび割れに沿った茶色い筋です。錆汁(さびじる)といいます。雨のあとに壁を伝って垂れた跡が残っていれば、その奥に錆びた鉄筋があります。

茶色い筋は、汚れではありません。

なぜ、建物の同じ場所ばかりが欠けるのか

鉄筋の表面からコンクリートの表面までの厚みを、かぶり厚さといいます。中性化がここを通り抜けて鉄筋に届くまでの時間を稼いでいるのが、この厚みです。

建築基準法施行令第79条が、最低限の数値を定めています。耐力壁以外の壁または床は2センチメートル以上。耐力壁、柱、はりは3センチメートル以上。直接土に接する壁、柱、床、はり、布基礎の立上り部分は4センチメートル以上。基礎は、捨てコンクリートの部分を除いて6センチメートル以上。

数字が部位ごとに違うところに、この規定の考え方が出ています。水や土に触れる場所ほど厚く取ります。

中性化の進み方には、知っておくと役に立つ性質があります。進む深さは、おおむね経過年数の平方根に比例します。最初の10年で進んだ深さと同じだけ進むのに、次は30年かかる計算です。全体としては、ゆっくりです。

では、なぜ築30年や40年の建物で鉄筋が顔を出すのか。

かぶり厚さが、場所によって違うからです。ベランダの手すり壁の先端、庇の先、外廊下の天井。こうした部材はもともと薄く、鉄筋が表面の近くを通っています。中性化が同じ速さで進んでも、先に届くのはここです。ひび割れが入っている箇所も同じで、そこだけ中性化が先回りします。

診断では、かぶり厚さから中性化の深さを引いた値を見ます。中性化残りといいます。塩分を含まないコンクリートではおよそ8ミリメートル、塩分を含むコンクリートではおよそ20ミリメートルを下回ると、鉄筋が錆び始める目安とされています。

2倍以上の差があります。

堺市は大阪湾に面しています。海からの風が運ぶ塩分はコンクリートの中に入り込み、中性化とは別の経路で鉄筋の膜を壊します。同じかぶり厚さ、同じ中性化の深さでも、塩分が入っている建物のほうが先に錆びます。海沿いの区に限った話ではないことは、堺の外壁に出る塩害が距離だけで決まらない理由に書きました。

築年数も重なります。泉北ニュータウンをはじめ、堺市の南部には1970年代前後に建った鉄筋コンクリートの住棟がまとまって残っています。当時の建物にも、外廊下も庇もベランダの手すり壁も、そのまま付いています。同じ泉北で修繕の時期が15年ずれる理由は、以前に書いたとおりです。

埋め直しても1年半で戻る、その理由

断面修復という作業の手順を書きます。

まず、欠けたところの周りを叩いて、浮いている範囲を確かめます。音が変わるところまでが浮きです。見えている穴より広いのが普通です。

次に、その範囲のコンクリートをはつって落とします。健全なコンクリートが出るまで、鉄筋の裏側へ回り込んで削ります。

出てきた鉄筋の錆を落とします。下地の汚れやサビを落とすこの作業を、現場ではケレンと呼びます。錆を残したまま先へ進めば、この工事の意味がなくなります。

錆を落とした鉄筋に、防錆材を塗ります。

そのうえで、ポリマーセメントモルタルという樹脂を混ぜたモルタルで埋め戻します。国土交通省の「公共建築改修工事標準仕様書」にも、既存下地の欠損部をポリマーセメントモルタルで補修する仕様が載っています。

手順を並べると、表面を埋めるだけの補修が何を飛ばしているかが見えます。錆を落としていません。膨らむものを中に閉じ込めたまま、蓋をしています。だから戻ります。

錆が進んで鉄筋そのものが痩せている場合は、鉄筋を足す判断が要ります。ここまで来ると、外装の手入れではなく建物を支える力の話になります。管理組合であれば、理事会だけで決められる範囲を超えることもあります。

見積もりの順番も、この手順から決まります。叩いて浮いている範囲を拾い出して、はじめて数量が出ます。数量が出て、はじめて金額が出ます。逆にすると、工事が始まってから数量が動きます。

高いところは、足場か高所作業車がなければ叩けません。大規模修繕で足場が建つときが、壁を上から下まで確かめられる数少ない機会になります。その周期が回を追うごとに早まる話は、国の調査をもとに以前まとめました。

見つけた日にやること

破片が落ちていたら、捨てずに残しておいてください。厚みを見れば、表面の仕上げが落ちたのか、コンクリートそのものが落ちたのかが分かります。

写真は2枚です。欠けている場所と、その真下に何があるか。真下が通路や駐輪場や駐車場なら、その日のうちにカラーコーンで人の動線を変えてください。落ちるのが1か所とは限りません。

それから見上げます。同じ高さの同じ部材に、同じ症状が並んでいることがよくあります。

株式会社KYOEIは大阪府堺市西区堀上緑町2-2-15から、堺市7区と大阪府南部で大規模修繕、外壁塗装、防水工事、雨漏り修理に伺っています。双葉シティプラザ大規模修繕工事のように、足場を組んで壁を1面ずつ叩いて回る仕事が本業です。

錆汁の写真が1枚あれば、はつる範囲の見当はつきます。電話は072-349-3278です。