「うちは海沿いじゃない」でも錆びる?堺の外壁に出る『塩害』が距離だけで決まらない理由
皆さま、こんにちは!株式会社KYOEIです。
ベランダの物干し金物の付け根に、赤い点が浮いている。エアコンの室外機を留めているネジの頭だけが茶色い。玄関ポーチの天井に、白くざらついたものが薄く付いている。
気づいてはいるけれど、「海のそばに建てたわけでもないし」と考えて、そのままにしている方は多いはずです。
堺市は大阪湾に面した市です。ただ、7つの区のうち海に接しているのは堺区と西区だけで、内陸の区で暮らしていれば海は日常の風景に入ってきません。潮の匂いもしません。
金属が錆びる速さは、海が見えるかどうかでは決まらないのです。
塩がどこまで届くのか、自分の建物のどこに出るのか。観測の結果と、今日から手を動かせる手入れの方法を並べます。
先に答えを書きます
塩害の強さは、海岸からの距離だけでは決まりません。風の向き、地形の細かな起伏、地面や建物の並び方で、同じ距離でも付く塩の量が変わります。
見る場所は決まっています。雨の当たらない面です。塩は水に溶けるため、雨がかかる面は勝手に洗われ、かからない面にだけ残り続けます。
手入れの柱も、そこから決まります。真水で流すこと。
潮風は、堺のどこから来ているのか
堺の海岸線は、もともとの姿ではありません。大阪府の資料によれば、堺泉北臨海工業地帯は昭和31年から47年にかけて、旧大阪府企業局が堺市、高石市、泉大津市の沿岸部を埋め立てて造成したもので、面積は約1,700万平方メートルにのぼります。堺市の説明では、臨海工業地帯の造成が始まったのが昭和32年、堺4区の埋立て開始が昭和33年です。
いま地図の上で海と陸を分けている線は、およそ50年から70年前に人が引いた線ということになります。
海の上では、波が立つと海面に気泡ができ、それがはじけるときに細かな水しぶきが空中へ飛びます。水の部分が蒸発すると、あとには塩の粒だけが残ります。これが海塩粒子(かいえんりゅうし)と呼ばれるもので、風に乗って陸のほうへ運ばれていきます。風が強い日ほど多く発生します。
では、どこまで届くのか。
電力中央研究所が2023年8月に公表した報告(SS22016)に、参考になる観測があります。送電設備の塩害を調べたもので、海岸線から40 m、500 m、1.4 km、2 kmの距離にある4地点で風向と風速を実測し、推定した値と突き合わせています。電力中央研究所は、飛んでくる塩の量や付着する量の分布について「微地形や地表面粗度に応じた局所的な変化が表現された」と報告しています。
地表面粗度というのは、地面のでこぼこの度合いのことです。建物が密に並んでいるか、田畑が開けているか、あいだに丘があるか。風はそれによって速さも向きも変えます。
海岸から何メートルまでが塩害地域、という一律の線は引けません。同じ町内でも、風の通り道に面した家と、隣の建物の陰になる家とでは条件が違います。
これは送電設備を対象にした研究です。ただ、風に運ばれた塩がどこに多く付くかという話は、建物でも同じことが起きています。
傷むのは、雨の当たらない面からです
塩害を探すとき、私たちが最初に見るのは軒の下と庇の裏です。
理由は単純で、塩は水に溶けるからです。雨が直接かかる壁面では、降るたびに塩が洗い流されます。ところが軒に守られた部分には雨が届かず、風で運ばれた塩だけが乗り続けます。守られているはずの場所のほうが先に傷むわけです。
見てほしい場所を挙げます。
- 軒の下と庇の裏の壁
- ベランダの内側の壁と、手すりの下端
- 玄関ポーチの天井まわり
- 物干し金物、面格子、雨樋の金具など、壁から生えている金物の付け根
- エアコンの配管を留めているビスとカバー
症状の出方には順番があります。はじめに、雨のかからない面へ白っぽい粉のようなものが薄く付きます。指で触るとざらつき、水を含ませた布で拭くと落ちます。次に、鉄の部品へ点のような錆が出ます。面ではなく点で始まるのが、塩による錆の見分けどころです。アルミの部分では表面の艶が部分的に失われ、細かい穴のような跡が残ります。
ここで紛らわしいのが、外壁の白い粉です。
塗膜が寿命を迎えて表面が粉になるチョーキングという現象があり、こちらも触ると手が白くなります。違いは分布に出ます。チョーキングは日の当たる面に広く均一に出ますが、塩は雨のかからない一部にだけ偏ります。見分け方はチョーキング現象の記事に詳しく書きました。
ステンレスなら錆びないと思われがちですが、塩が付いたまま放っておくと、まわりの鉄粉や錆をもらって茶色い点が出ます。もらいさびと呼ばれる状態です。
塩がコンクリートの中まで届いたとき
戸建ての金物の錆は、部品を替えれば済みます。やっかいなのはコンクリートの建物のほうです。
コンクリートは強いアルカリ性で、その中にある鉄筋の表面には錆から守る薄い膜ができています。塩の主成分である塩化物イオンがこの膜を壊すと、鉄筋が錆び始めます。錆びた鉄筋は体積が増え、まわりのコンクリートを内側から押し広げます。表面がひび割れ、やがて剥がれ落ちます。
外から見えるようになった時点で、中ではかなり進んでいます。
タイル張りの建物なら、タイルが浮きます。塗装だけを繰り返していても、この動きは止まりません。マンションやビルで大規模修繕の周期を決めるとき、海に近い建物ほど前倒しの判断が要るのはこのためです。
堺市には、泉北ニュータウンをはじめ1970年代前後に建った鉄筋コンクリートの住棟が、いまも数多く残っています。築50年を超えたものも珍しくありません。
手入れは、真水で流すこと。それだけです
材料そのものが弱いわけではありません。
日本アルミニウム協会は、表面処理をしていないアルミニウムでも空気中で自然に酸化して耐食性のよい皮膜ができると説明したうえで、「海岸地区においても耐食アルミニウム合金板(A5052P-H34)が生地のまま屋根などに使われ、優れた性能を示している」と書いています。問題は材料ではなく、塩を載せたまま放っておくことです。
具体的な手入れの方法は、建材メーカーが公表しています。LIXILはアルミ製品のお手入れの案内で、清掃の目安を「少なくとも年に1〜2回程度」としたうえで、「特に海岸地帯や交通量の多い道路沿いは、塩分や排気ガスによる汚損が進みやすいので、こまめにお手入れしてください」と添えています。
使う洗剤にも指定があります。LIXILは同じ案内で、洗浄剤や薬品は中性のものを使うよう求め、酸性薬品、アルカリ性薬品、塩素系薬品、そしてエタノール以外の有機溶剤は「絶対に使用しないでください」としています。金属部分を腐食させ、塗膜の剥がれを招くからです。ワイヤーブラシやサンドペーパーも避けます。
やることはこれだけです。ホースで水をかけ、柔らかい布かスポンジで軽くこすり、もう一度流す。
時期を1つ挙げるなら、台風の翌日です。強い風は海の上を渡ってくるあいだに塩を大量に含み、一晩で建物の壁面へ付きます。雨がやんだあとそのまま乾かせば、塩は残ります。翌日に軒下とベランダを洗っておくかどうかで、金物のもちが変わります。
塗り替えの工事でも、塩害を受けた建物では高圧洗浄の位置づけが変わります。汚れを落とす作業であると同時に、壁に染みた塩を洗い落とす作業になるからです。洗いが甘いまま塗れば、塗膜の下に塩が残ります。
週末に、軒の下を見てください
順番を決めておくと動きやすくなります。まず軒の下と庇の裏。次にベランダの内側と手すりの下端。最後に、壁から生えている金物の付け根。この3か所で白い粉や点の錆が見つかったなら、潮風は届いています。
株式会社KYOEIは大阪府堺市西区堀上緑町2-2-15を拠点に、堺市7区と高石市、和泉市などの大阪府南部で、外壁の改修と防水工事を手がけています。UKビル屋上防水工事のように、風と雨が直接あたる場所を扱う仕事が本業です。
金物の付け根の錆や、軒下の白い粉が気になったら、写真を1枚送ってください。塩によるものか塗膜の寿命によるものかは、出ている場所でおおよそ見当がつきます。電話は072-349-3278です。