ベランダの床は誰が直す?マンションの『共用部分と専有部分』の本当の境界
皆さま、こんにちは!株式会社KYOEIです。
大規模修繕の見積書を各戸へ配ったあと、修繕委員会にこんな質問が届くことがあります。「ベランダの床の防水はやってくれるのに、なぜ網戸の張り替えは入っていないのか」。玄関の扉でも同じことが起きます。外側は塗るのに、内側は塗らない。
その場で答えられないと、話は「不公平だ」という方向へ流れます。
境目は感覚では決まりません。法律と、そのマンションの管理規約に書いてあります。そして多くの方が思っているより、線は住戸の内側に寄っています。
どこまでが組合の負担で、どこからが各戸の負担なのか。国が示すひな形の条文と、堺市が実際に調べた数字から確かめます。
先に答えを書きます
ベランダも玄関扉も窓ガラスも、法律の上では共用部分です。各住戸の持ち物ではありません。
そのうえで、そこを使う権利だけが各住戸に与えられています。専用使用権と呼びます。掃除や割れた窓ガラスの入れ替えは使っている人。年数による傷みを直すのは管理組合。分かれ目はここです。
ただし、最後に効くのは国のひな形ではありません。自分のマンションの管理規約です。
法律が「専有部分」と呼ぶ範囲は、思っているより狭い
建物の区分所有等に関する法律は、第2条第4項で共用部分をこう定めています。「専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう」。
引き算の書き方です。専有部分でないものは、すべて共用部分に落ちます。
では専有部分とはどこまでか。国土交通省が公表しているマンション標準管理規約(単棟型)の第7条が、ひな形として範囲を示しています。天井、床及び壁は躯体部分を除く部分。玄関扉は錠及び内部塗装部分。窓枠及び窓ガラスは専有部分に含まれない。
躯体(くたい)とは、建物を支えているコンクリートや鉄骨の部分です。上下階と隣の住戸がここで一体につながっているため、一戸だけの持ち物にはできません。
読み替えると、こうなります。
- 部屋の床は、コンクリートの上に載っている仕上げ材から内側だけが自分のもの
- 玄関扉は、鍵と内側の塗装だけが自分のもの
- 窓のサッシとガラスは、自分のものではない
ベランダも同じです。床のコンクリートは、下の階から見れば天井です。
なお、規約の条文では「バルコニー」と書かれます。この記事では条文を引くときだけ原文どおりにして、それ以外は「ベランダ」に言い方をそろえます。
掃除は各戸、防水は組合。分かれ目は「通常の使用」
標準管理規約の第14条は、バルコニー、玄関扉、窓枠、窓ガラス、一階に面する庭、屋上テラスについて、区分所有者が専用使用権を有すると定めています。持っているのは所有権ではなく、使う権利です。
管理の責任は第21条にあります。敷地及び共用部分等の管理は管理組合がその責任と負担において行う。ただし、バルコニー等の管理のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担において行わなければならない。
その「通常の使用に伴う」が何を指すのかは、規約に付いているコメントに書いてあります。バルコニーの清掃や、窓ガラスが割れた時の入れ替え等。
年数による傷みへの対応は、管理組合が計画修繕として行うものとされています。
だから見積書の線は、こう引かれます。
- 組合の負担:ベランダの床の防水、手すりの塗装、隔て板(隣の住戸との仕切り)の交換、玄関扉の外側の塗装
- 各戸の負担:ベランダの掃除、割れた窓ガラスの入れ替え、網戸の張り替え、玄関扉の内側の塗装
この一覧を説明会で1枚配っておくと、当日に出る質問の量が変わります。
例外も同じコメントに書かれています。他のベランダと比べて劣化の程度が顕著で、しかも計画上の修繕周期より短い期間で傷んだ場合は、専用使用権を持つ人の負担として扱われます。物を積み上げたまま何年も放置した、排水口をふさいだまま水をためた、といった状況です。
現場では、この判断が難しくなる建物があります。海に近い建物です。潮風で鉄部の錆が早く進むため、手入れの差なのか立地の差なのかが見分けにくくなります。大規模修繕の周期を決めるときに、立地を先に整理しておくと後がもめません。
窓を替えたいときだけ、順番が逆になります
窓が共用部分なら、断熱のために替えたいと思っても勝手には動かせません。ここは第22条が別の道を用意しています。
防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資する共用部分の開口部の改良工事は、管理組合が計画修繕として実施する。これが原則です。
そのうえで、管理組合が速やかに実施できない場合には、区分所有者が理事長に申請して承認を受けることにより、その工事を行えると定められています。想定されているのは、複層ガラスやサッシ等への交換、既設のサッシへの内窓又は外窓の増設などです。
順番を間違えると、工事のあとで原状回復を求められることがあります。まず理事会。
管理組合の側から見れば、内窓の申請が続くようなら、そのマンションは断熱の性能が実情に合っていないという合図です。次の長期修繕計画と積立金の見直しで、開口部を項目に入れるかどうかを検討する材料になります。
決め手は国のひな形ではなく、自分たちの規約
ここまで標準管理規約を引いてきましたが、国が示しているのはあくまでひな形です。各マンションの規約がこのとおりだとは限りません。
堺市が令和3年度に行った分譲マンション実態調査に、その裏づけがあります。市内の分譲マンション管理組合586件を対象に、令和3年11月15日から12月25日にかけて実施し、158票が返ってきた調査です。
自分たちの規約が標準管理規約に準拠しているかを尋ねた項目で、「改正後の標準管理規約に概ね準拠」と答えたのは52.0%でした。「改正前の標準管理規約に概ね準拠」が26.7%、「標準管理規約に準拠していない」が4.0%、「わからない」が16.7%です。
半分近くのマンションが、古い版のままか、自分の規約の立ち位置を把握できていません。
しかも、ひな形の側が動きました。老朽化したマンションの管理と再生を円滑にするための改正区分所有法が令和8年4月1日に施行され、それに合わせて国土交通省はマンション標準管理規約を令和7年10月17日に改正しています。検索で出てきた解説記事が、いま手元にある規約と同じ版だとは限らない状況です。
堺市の建物の側も待ってくれません。同じ調査では、市内の分譲マンションは令和3年12月時点で586団地、977棟、61,684戸。このうち築40年を超えたものは約14,000戸で、10年後には約23,000戸、20年後には約40,000戸になると市は見込んでいます。旧耐震基準で建てられた住戸も15,005戸、全体の24.3%を占めます。
築年数が伸びるほど、ベランダの床も手すりも玄関扉も傷みます。そのときに「これは誰の負担か」を規約なしで議論すると、答えは出ません。
総会の前に、規約と別表を読み合わせる
やることは1つです。管理規約の第7条にあたる条項と、専用使用権の一覧を載せた別表を印刷して、修繕委員会で読み合わせてください。ひな形と違う書き方をしている箇所が、そのマンションの独自ルールです。そこが後日もめる場所になります。
株式会社KYOEIは大阪府堺市西区堀上緑町2-2-15を拠点に、堺市7区と大阪府南部でマンションやビルの大規模修繕、外壁改修、防水工事を手がけています。双葉シティプラザ大規模修繕工事やハイマート弥刀大規模修繕工事のような分譲マンションの現場と、公営住宅の外壁改修が仕事の柱です。
見積書の内訳が共用部分と専有部分のどちらに当たるのか判断がつかないときは、規約の写しと図面をお持ちください。工事の範囲を1項目ずつ突き合わせてご説明します。電話は072-349-3278です。
株式会社KYOEI
大阪府堺市西区堀上緑町2-2-15
072-349-3278