「シーリングにひびが入ったら、すぐ打ち替え」は本当?国の研究機関が『切れ』の深さで分ける3段階と、急がなくてよいサイン
皆さま、こんにちは!株式会社KYOEIです。
家のまわりを掃除していて、サイディングの板と板のつなぎ目(目地)に詰めてあるゴム状の材料に、細いひびが何本も入っているのに気づいた。窓の角では、材料と外壁のあいだにすき間が見える。シーリングと呼ばれる部分です。数日後に訪ねてきた営業の方には「ひびが入っているので、すぐ打ち替えないと雨漏りします」と言われた。本当に急ぐ話なのか、判断に迷うところです。
この記事では、国の研究機関がシーリングの傷みをどう分類し、どの深さから補修が要ると判定しているのかを書きます。
先に答えを書きます
建築研究所が2013年8月に出した「建築研究資料No.145」は、シーリングの劣化と不具合を12種類に整理しています。そのうち、補修の判定に使う項目は「被着面からのはく離」と「破断(口開き)」の2つだけです。どちらも、深さの半分以上か5ミリ以上に達していれば、いちばん重い劣化度Ⅲと判定します。表面の細いひび割れや色あせ、粉をふく現象は参考項目の扱いです。漏水もはく離も破断もなければ、見た目だけを理由に補修はしない、と資料ははっきり書いています。
目地のシーリングに出る「劣化」は何種類あるのか
建築研究所の整理では、シーリングに起きる現象が2つのグループに分かれています。
防水の働きに関わるもの:
漏水:漏水またはその痕跡
被着面からのはく離:シーリングが、くっついていた外壁の側面(被着面)からはがれる
シーリング材の破断(口開き):ひびが目地の底まで届き、完全に切れている
被着体の破壊:目地のまわりの外壁そのものにひび割れや欠けが出る
シーリング材の変形:ふくれたり、くびれたりする
シーリング材の軟化:紫外線や熱で軟らかくなる
見た目に関わるものは、しわ、汚れ、表面の細かいひび割れ、表面が粉状になる白亜化(チョーキング)、上に塗った塗料の浮きや変色、変退色の6つです。
冒頭のお宅に当てはめると、何本も入った細いひびは見た目のグループの「ひび割れ」です。窓の角のすき間は、防水のグループの「被着面からのはく離」にあたる可能性があります。同じ「ひびが入った」でも、指している現象が違います。
はがれの要因として資料が挙げるのは、紫外線、温度や熱、地震などによる下地の動きです。外壁の板が動くぶんを受け止め続けた目地は、接着面か材料の中で切れていきます。
どこから「切れている」と判定するのか
判定項目の2つには、深さで3段階の線が引かれています。
劣化度Ⅲ:はがれや口開きが、シーリングの深さ(厚み)の1/2以上、または5ミリ以上
劣化度Ⅱ:深さの1/4〜1/2、または2〜5ミリ
劣化度Ⅰ:深さの1/4未満、または2ミリ未満
はく離は目地の深さに対して、破断はシーリングの厚みに対して測ります。劣化度Ⅲは「改修が必要」、Ⅱは「現状放置可能。ただし、早い時期に改修が必要」、Ⅰは「現状放置可能」と判定します。
参考項目にも目安があります。シーリング表面のひび割れは、幅1〜2ミリでⅢ、0.5〜1ミリでⅡ、0.5ミリ未満でⅠです。目地のまわりの外壁に入ったひびは、幅0.3ミリ以上でⅢになります。
見て回る範囲は、資料の1次診断が参考になります。目で見て指で触る観察で、対象は1階部分や開け閉めする窓のまわりなど、たやすく見られる場所です。脚立を使い物差しを当てるのは2次診断の段階なので、2階の目地まで自分で上る必要はありません。
もう1つ、資料の耐用年数の計算式(1980年代の国の研究で示されたもの)には、外壁の色と向きの係数があります。明るい色の壁なら北面が1.4、東・南・西面が1.2、暗い色の壁なら北面が1.0、東・南・西面が0.8です。数字が小さいほど早く傷む見込みなので、色の濃い外壁の南や西の面から先に見てください。
劣化度Ⅲが見つかったら、すぐ全部打ち替えるのか
資料は、劣化度Ⅲが出たあとにもう一段の判断を置いています。
ⅠかⅡ:保守と点検を続ける
Ⅲがあり、経過年数が10年以上:改修する
Ⅲがあり、10年未満:Ⅲの部分が目地全長の10%以上なら改修する。10%未満なら保守と点検
10年という数字には根拠があります。1980年代の国の研究で、シーリングの標準的な耐用年数は「当面10年」とされました。その後の調査も、同じ資料に引かれています。日本建築学会の作業部会が、主に竣工から15年以内の建物の目地から材料を切り取って調べたものです。対象は変成シリコーン系が85物件、ポリサルファイド系が59物件、ポリウレタン系が79物件、アクリルウレタン系が14物件でした。引っぱったときの抵抗の強さと、切れるまでの伸びのどちらでも、劣化度がⅠかⅡに収まった割合は、どの材料でも9割を超えていました。
材料の中身は、10年を超えてもそれほど衰えていませんでした。それでも資料は、見た目のために物性が落ちる前に打ち替えることが多いとして、10年の目安を今も妥当としています。
補修の規模の判定表には、次の一文があります。
「意匠上補修を要すると判定されても,漏水・はく離・破断がない場合は,特に必要を認めない限り補修を行わない.」
はがれと口開きがなく、室内に水の跡もないなら、表面のひびを理由にあわてて打ち替える話にはなりません。
堺市でも、この10年の線をまたぐ住宅はまとまった数になります。堺市統計書に載っている令和5年の住宅・土地統計調査によると、市内の住宅(マンションの住戸を含む)370,600戸のうち、平成23年から27年(2011〜2015年)に建ったものが28,700戸、平成28年から令和2年(2016〜2020年)に建ったものが30,000戸と推計されています。前者はすでに築10年を超え、後者はいまちょうど10年前後です。この年代の家で一度もシーリングに手を入れていないなら、劣化度Ⅲが1か所でもあれば改修を考える段階に入っています。
塗り替えのとき、傷んだシーリングはどうするのか
資料が引く調査には、塗装との関係が読み取れる結果があります。切れるまでの伸びで劣化度Ⅲにあたったものは、変成シリコーン系で7.3%、ポリサルファイド系で4.8%あった一方、ポリウレタン系とアクリルウレタン系では0%でした。資料は、前の2つには露出したまま使われていたものが多く、後の2つには塗装の下地として使われていたものが多かったためと推定しています。上から塗った塗膜が、シーリングを紫外線から守っていたと読めます。
ただし、守れるのはまだ切れていないシーリングです。劣化の一覧に「仕上げ材の浮き、変色」があるとおり、下のシーリングが動きに負けて切れれば、上の塗膜も一緒に浮いたり割れたりします。口が開いた目地の上から塗っても、すき間はふさがりません。
補修の工法として挙がっているのは、次の3つです。
再充填工法:古いシーリングを取り除いて、同じ目地に詰め直す
拡幅再充填工法:目地の幅を広げてから詰め直す
ブリッジ工法:古いシーリングの上を覆うように、新しいシーリングを帯状にかぶせる
目地の幅や深さが適切で、古いシーリングを取り除けて、外壁の側面に欠けや割れがなければ、再充填工法を選ぶ流れです。比較表では、再充填工法は性能、作業環境、見た目がいずれも「良」です。ブリッジ工法は性能が「優」で安価な一方、目地の上に帯が残るため見た目は「不可」とされています。撤去から充填までの作業の流れは、シーリング打ち替えの裏側の記事で書きました。
目地を見て回るときは、深さと年数を控えておく
晴れた日に、1階の目地と窓のまわりを一周してみてください。見るのは、外壁の側面からのはがれと、目地の底まで届いた口開きです。奥まで届いていそうな箇所があれば、写真を撮り、家を建てた年か前回シーリングを打ち替えた年を控えておきます。表面の細いひびや色あせだけなら、次の塗り替えの計画の中で一緒に考えれば足ります。
株式会社KYOEIは、大阪府堺市西区堀上緑町2-2-15を拠点に、堺市7区と大阪府南部で外壁塗装と大規模修繕を手がけています。施工実績には大国住宅1号館外壁部分改修その他工事があります。撮った目地の写真を見ながら、はがれと口開きの深さを一緒に確かめたい方は、072-349-3278へお電話ください。