「大規模修繕は4分の3の賛成が必要」は本当?2026年4月に変わった総会の『数え方』
皆さま、こんにちは!株式会社KYOEIです。
9月の理事会で、来年の総会に大規模修繕の議案を出す話になった。「たしか4分の3の賛成が要ったはずだ」と誰かが言い、別の役員が返します。「うちは総会に来るのが3割ほどですよ」。そこで話が止まります。
堺市内の管理組合から、こうした相談が届きます。
止まる理由は2つあります。1つは、この4月に法律が変わったことを知らないまま、以前の数字を思い出していること。もう1つは、工事の中身によって必要な賛成の数が動く、という前提が共有されていないことです。
先に答えを書きます
外壁塗装や防水のやり直しのように、傷んだところを元の性能に戻す工事は、区分所有法がいう「形状又は効用の著しい変更」に当たりません。要るのは4分の3ではなく、過半数。
そのうえで、2026年4月1日から、賛成を数える母数が「区分所有者の全員」から「出席した区分所有者」に変わりました。委任状と議決権行使書は、この「出席」に算入されます。
「大規模」と付いていても、4分の3が要るとは限りません
区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)の第17条第1項は、こう始まります。
共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。第五項において同じ。)は、
建物の区分所有等に関する法律 第17条第1項
括弧の中が効いています。「著しい変更を伴わないもの」は、17条の対象から外れます。外れたものは第18条第1項が引き取ります。
共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
建物の区分所有等に関する法律 第18条第1項
ここでいう「集会の決議」の中身を定めているのが第39条第1項で、そちらは過半数です。
法律は、工事の規模ではなく中身で線を引いています。足場を組んで全戸のベランダに入る工事でも、やっているのが劣化した部分の回復なら、17条の話になりません。屋上に新しい設備を載せる、階段室を壊してエレベーターを付けるといった、建物の形や使い道そのものを変える工事は17条に入ります。
議案を出す前に決めるべきは、賛成の割合より先に、その工事がどちら側かということです。マンションの共用部分と専有部分の境界と同じで、線の引き方を先に確かめます。
なお第17条第5項は、共用部分の瑕疵を取り除くために必要な変更と、高齢者や障害者の移動の負担を減らすための変更について、「四分の三」を「三分の二」に読み替えると定めています。
4分の3という数字は動いていません。動いたのは母数です
法務省によると、「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第47号)は2025年5月23日に成立し、5月30日に公布されました。区分所有法の改正部分が施行されたのは2026年4月1日です。
2026年3月31日まで、第39条第1項はこう書かれていました。
集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。
建物の区分所有等に関する法律 第39条第1項(2026年3月31日まで)
現在は、こうです。
集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及びその議決権の各過半数で決する。
建物の区分所有等に関する法律 第39条第1項(現行)
「出席した」が入りました。
ただし、どちらの条文にも「規約に別段の定めがない限り」という書き出しがあります。標準管理規約に沿った規約を持つ組合なら、普通決議はもともと出席組合員を母数にしていたはずです。今回の改正が実際に効くのは、規約に定めを置いていない組合と、特別決議のほうです。
特別決議は、規約で母数を変えられませんでした。改正前の第17条第1項を引きます。
共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
建物の区分所有等に関する法律 第17条第1項(2026年3月31日まで)
現在の条文は、出席の要件と、出席者を母数とする4分の3に組み替えられています。長い一文なので、要点だけ書きます。まず、区分所有者と議決権の両方で過半数が出席していること。そのうえで、出席した区分所有者とその議決権の各4分の3以上の賛成。
100戸のマンションで、議決権が1戸1票だとします。委任状と議決権行使書を含めて60戸が出席すれば、区分所有者と議決権の両方で過半数という出席の条件を満たします。以前の原則では、100の4分の3にあたる75の賛成が要り、60戸が全員賛成しても届きませんでした。今は60の4分の3、45で決まります。
委任状と議決権行使書は「出席」に入ります
母数が出席者になったということは、委任状と議決権行使書を集める作業が、そのまま出席の条件と母数の両方をつくる作業になったということです。第39条第2項が、そこを明示しています。
議決権は、書面又は代理人によつても行使することができる。この場合において、書面又は代理人によつて議決権を行使した区分所有者の数は出席した区分所有者の数に、当該議決権の数は出席した区分所有者の議決権の数に、それぞれ算入する。
建物の区分所有等に関する法律 第39条第2項
築40年、50年の建物になると、相続が済んでいない住戸や、連絡の取れない所有者が出てきます。泉北ニュータウンのように供給の時期がまとまっている地域では、この事情が組合ごとに違います。
今回の改正では第38条の2が新設されました。裁判所が「所在等不明区分所有者」と認めた人は、集会の議決権を持たないものとして扱われます。ただし裁判所への請求が要る手続きです。総会の直前に思いついて間に合う話ではありません。
議案書に工事の中身がないと、決議の要件も決まりません
ここまでの話には、現場側の帰結があります。
賛成の数が工事の中身で決まる以上、議案書には中身が書かれていなければなりません。「大規模修繕工事一式」とだけ並んだ議案では、それが17条なのか18条なのかを誰も判定できません。見積書の「一式」が危ういのと、理由は同じです。
書き分けが要るのは、工事の対象、工法、そして既存がどうなっているかです。外壁のタイルを叩いて浮きを拾い、その数量を出す。屋上の防水を、保護コンクリートごと撤去するのか、上からかぶせるのかを決める。かぶせると決めた場合は、既存の層を残すという判断そのものが議案に載ります。
双葉シティプラザ大規模修繕工事やハイマート弥刀大規模修繕工事でも、最初にやることは変わりません。建物に上がり、叩き、数量を出します。海に近い棟では鉄部のさびの出方が内陸と違うため、同じ堺市でも数量が動きます。
総会の前に、手元の管理規約を開いてください
法律は原則を書いているだけで、多くの条文に「規約に別段の定めがない限り」という条件が付いています。先に見るのは、条文より手元の規約です。
見る箇所は3つあります。総会の定足数、普通決議の要件、そして特別決議の対象として何が並んでいるか。国土交通省はマンション標準管理規約を2025年10月17日に改正しており、規約の側も見直しの時期に入っています。
株式会社KYOEIは、大阪府堺市西区堀上緑町2-2-15から、堺市7区と大阪府南部で大規模修繕、外壁塗装、防水工事、雨漏り修理に伺っています。議案に載せる工事の範囲と数量で迷っているときは、建物を見せてください。電話は072-349-3278です。