「通気緩衝工法は高いだけ」は本当?屋上防水の膨れを止める脱気筒と、密着工法との分かれ目

皆さま、こんにちは!株式会社KYOEIです。

屋上防水の見積もりを2社から取ったところ、片方には「ウレタン塗膜防水 密着工法」、もう片方には「ウレタン塗膜防水 通気緩衝工法 脱気筒6か所」と書いてありました。同じウレタンなのに、金額はそこそこ開いています。

安いほうで足りるのではありませんか。

そう考えるのは自然です。ただ、この2つは同じ工事の松竹梅ではありません。国土交通省の仕様書にも、別々の記号を振られた工法として並んでいます。分かれ目になるのは値段ではなく、屋上の下地に水が残っているかどうかです。

先に答えを書きます

通気緩衝工法は、防水層と下地のあいだにシートを1枚はさみ、下地から上がってくる湿気を脱気筒(だっきとう)へ逃がす組み方です。既存の防水層を残して上から新しい防水層をかぶせる改修では、下地を乾かせません。乾かせない屋上に密着工法を選ぶと、数年で水ぶくれのような膨れが出ます。

高い工法が良い工法という話ではありません。下地の状態が工法を決めます。

防水が水ぶくれのように膨らむのは、下から押されているからです

屋上に上がると、防水層が直径数十センチの円形に浮いていることがあります。踏むとぶよぶよする。刃物を入れると水が出てくることもあります。

見るべきは上ではありません。下です。

建物の床であるコンクリートには、水分が残っています。新築で防水をかけるときは、下地が乾くのを待てます。改修は事情が違います。既存の防水層の下に長年かけて入り込んだ水、保護コンクリートの内部に残った水、そういったものを工期のなかで乾かす時間はありません。

そこへ日射が加わります。国土交通省が平成25年12月にまとめた「ヒートアイランド現象緩和に向けた都市づくりガイドライン」は、アスファルトやコンクリートの舗装面と建物の屋根面について、夏の日中に日射を受けると表面温度が50度から60度程度まで上がると書いています。

その温度の板の下に閉じ込められた水は、水蒸気になって体積を増やします。逃げ道がなければ、いちばん弱いところを押します。上に載っている防水層です。

膨れた場所は、そのうち裂けます。裂ければ、そこから雨が入ります。

国の仕様書は、この2つを別の工法として並べています

国土交通省の公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)は、3章の防水改修工事のなかにウレタンゴム系の塗膜防水を置き、工法に記号を振っています。X-1とX-2です。

X-2が密着工法です。下地にプライマーを塗り、ウレタンの防水材を塗りながら補強布を張り、その上にウレタンを2回重ね、最後に仕上塗料を塗ります。防水層は下地に全面で接着します。

X-1が通気緩衝工法(絶縁工法)です。工程の1つ目から違います。接着剤を塗って通気緩衝シートを張り、そのうえにウレタンを重ねていきます。このシートが防水層のいちばん下に入るため、防水層は下地に全面では密着しません。

シートの役目は2つあります。1つは下地の動きを受け流すこと。ひび割れが季節ごとに開いたり閉じたりしても、上の防水層に直接は伝わりません。もう1つが、下地から上がってくる湿気を横に通すことです。

通した先に要るのが脱気装置、現場でいう脱気筒です。屋上にきのこのような金物が点々と立っているのを見たことがあるかもしれません。あれが出口です。シートの中を横に走った水蒸気は、そこから外へ抜けます。

数はどう決まるのか。標準仕様書は特記によるとしていて、材料メーカーが仕様書に合わせて公開している仕様表では、特記がなければ70平方メートルから80平方メートルあたり1か所という目安が示されています。100平方メートルの屋上なら1か所から2か所。

立てる位置にも決まりごとがあります。水が集まる側ではなく、屋上のなかで高い側に立てます。低いほうには雨水が最後に集まる排水口があり、そこに脱気筒を置いても水蒸気は抜けません。

壁の立上りは、X-1でもX-2でも同じつくりです。垂直な面には湿気がたまらないため、通気緩衝シートは入れず、補強布を張って密着させます。

見積書のどこを見れば、話が具体的になるのか

「防水工事 一式」とだけ書かれていると、どちらの工法なのかも分かりません。次の4つが入っているかを見てください。

  • 工法の名前。密着工法か通気緩衝工法か。X-1、X-2という記号で書かれることもあります
  • 脱気筒の数量。「6か所」のように数で入っているか
  • 通気緩衝シートの品名。メーカー名と製品名まで書けるものです
  • 平場と立上りが分けて拾ってあるか。単位はどちらも平方メートル

そのうえで、聞いておきたいことが1つあります。下地の含水をどうやって確かめたかです。

高圧洗浄で濡らした翌日に水が引いているか。既存の防水層に切り込みを入れて、下から水が出てこないか。膨れをすでに何か所か踏んでみたか。方法は現場によりますが、確かめないまま工法を決めているなら、それは見積もりというより当て推量です。

密着工法が劣っているわけではありません。下地が乾いている新設の屋上や、面積の小さいベランダなら、密着でじゅうぶんもちます。困るのは、乾いていない屋上に密着を選んだときだけです。

堺のビルとマンションで、この判断が出てくる場面

堺市の住宅ストックには、1970年前後に建った中層の集合住宅がまとまって残っています。同じ泉北ニュータウンでも棟ごとに建設年が15年ほど開いていることは、以前に書きました。当時の陸屋根は、アスファルト防水の上に保護コンクリートを打つつくりが標準でした。

その屋上を、いま何度目かの改修で触ることになります。保護コンクリートを全部はつって防水層からやり直すのは、人が住んでいる建物では負担が大きい。だから保護コンクリートを残したまま上にかぶせる判断になりやすいのですが、残すということは、その中の水も残るということです。防水材のメーカーが公開している改修工法の選定表でも、保護コンクリート仕上げの屋上にウレタンをかぶせる場合には通気緩衝工法が挙げられています。

賃貸ビルのオーナーには、屋上を見る機会が制度として用意されています。建築基準法第12条の定期報告です。堺市の場合、特定建築物の定期調査報告は3年ごと。受付は大阪建築防災センターに委託されていて、対象になる用途と規模は堺市建築基準法施行細則第13条で指定されています。国が定めた調査項目には「屋上及び屋根」があり、屋上面の劣化と損傷を見ます。

3年に一度、資格を持った人が屋上に上がる。その報告書に防水層の膨れが書かれているなら、次の改修の話は工法の選び方から始まります。

私たちの施工実績にもUKビル屋上防水工事が並んでいます。ビルでも住宅の棟でも、屋上に上がって最初にやることは変わりません。歩いて、踏んで、音を聞きます。

屋上で撮ってほしい3枚

浮いている場所を上から1枚。その場所に足を乗せたところをもう1枚。そして、きのこ型の金物が立っているかどうかが分かる全景を1枚。

この3枚があれば、通気緩衝工法が要る屋上かどうか、見当をつけるところまでは進みます。

株式会社KYOEIは、大阪府堺市西区堀上緑町2-2-15から、堺市7区と大阪府南部で防水工事、大規模修繕、外壁塗装、雨漏り修理に伺っています。屋上の膨れは、天井にシミが出るより先に見つかる数少ないサインです。写真を送っていただければ、密着でいけるのか、シートを入れたほうがよいのかをご説明します。電話は072-349-3278です。