「サビは落として塗るだけ」は本当?鉄部の『3種ケレン』が橋の便覧から来ている理由

皆さま、こんにちは!株式会社KYOEIです。

修繕委員会に回ってきた見積書に、こう書いてありました。「鉄部塗装 素地調整 3種ケレン」。開放廊下の手すりのさびが目立ってきたので、次の工事で直そうという話になった建物です。

3種、という数字が引っかかります。

1種があるなら、そちらのほうが丁寧なのではないか。2種を選べば真ん中に落ち着くのか。金額と見比べても、判断のとっかかりがありません。

この数字には、はっきりした出どころがあります。ただしそれは、建物のための本ではありません。

答えから書きます

1種から4種という区分は、公益社団法人日本道路協会の『鋼道路橋防食便覧』に載っている「素地調整程度」の区分です。道路橋、つまり橋を塗り替えるための本です。

線を引いているのは、職人の腕でも工具の値段でもありません。さびが出ている面積の割合です。

そして建物の側にある国の仕様書では、記号そのものが違います。1種でも3種でもなく、RA種、RB種、RC種と書かれています。

分けているのは、さびの面積

『鋼道路橋防食便覧』は平成26年3月に出て、平成30年9月に改訂されています。置かれている区分は、おおまかに次のとおりです。

  • 1種:さびと古い塗膜をすべて落とし、鋼材の面を出す。ブラスト法による
  • 2種:さびの面積が30%以上のときに、さびと古い塗膜を落として鋼材の面を出す
  • 3種:活膜(かつまく)は残し、さびや割れ、ふくれといった不良部だけを落とす
  • 4種:活膜を残したまま、粉になった塗膜と汚れを落とす

活膜は、まだ下地にしっかり付いている生きた塗膜のことです。ここまで剥がす理由はありません。

3種はさらにA、B、Cに分かれます。3種Aはさびの面積が15%から30%、3種Bが5%から15%、3種Cが5%以下。ここまで細かく数字が振ってあるのは、全国の橋の管理者が同じ物差しで判断するための決まりだからです。

土木学会の技術情報でも、3種Bは「活膜は残すがそれ以外の不良部(さび、割れ、ふくれ)は除去する」と説明されています。

3種Cと4種は、どちらもさびの面積が5%以下の範囲です。分かれ目は、さびの量よりも塗膜そのものの傷み方のほうにあります。

1種はブラスト法を使うため、道路橋のような大きな構造物が前提になります。2種は実用的ではないとされています。マンションの手すりや鉄骨階段で現実に出てくるのは、3種と4種のあたりです。

だから見積書に「3種ケレン」と書いてあること自体は、おかしな話ではありません。

建物の仕様書には、その数字が出てこない

国が出している『公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)』には、塗装改修工事の章があります。その中の下地調整の節に、鉄鋼面の扱いが書かれています。

平成31年版の文言はこうです。

鉄鋼面の下地調整は、表7.2.2により、種別は特記による。特記がなければ、RB種とする。

公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)平成31年版 7章2節

RA種、RB種、RC種。1種から4種という数字は、ここには出てきません。RA種は古い塗膜を全面的に落とす仕様で、RB種は付いている塗膜を残して塗り重ねる仕様です。設計図書に何も書かれていなければ、RB種になります。

落とせば落とすほどよい、という話でもありません。生きている塗膜まで剥がせば、その分だけ新しく塗る面が増えます。工期も費用もそこで動きます。残せる塗膜をどこで見極めるか。等級はそのための物差しです。

見積書の「3種ケレン」は、橋の言葉が建築の現場に流れ込んで定着したものです。

慣用で動いている言葉である以上、同じ「3種」でも、会社によって手が動く範囲が違っていておかしくありません。数字を確かめるのではなく、何をどこまで落とすのかを言葉で確かめたほうが早く済みます。作業そのものの中身はケレンという下地処理の裏側にまとめました。

鉄部だけ、倍の速さで回ってくる

国土交通省が令和6年6月に改定した長期修繕計画標準様式は、工事の項目ごとに修繕周期の目安を置いています。

鉄部塗装(雨掛かり部分)の塗替は、5年から7年。対象部位の例として挙がっているのは、鋼製の開放廊下と階段、そしてバルコニーの手すりです。

同じ表で、外壁塗装(雨掛かり部分)の塗替は12年から15年です。シーリングの打替も12年から15年、屋上防水(露出)の補修と修繕も12年から15年。

鉄部だけが、倍の速さで回ってきます。

大規模修繕の谷間に鉄部塗装だけの工事が挟まるのは、この差によるものです。長期修繕計画にその回が入っていなければ、積立金の側で足が出ます。

堺の海沿いでは、面ごとに答えが変わる

等級がさびの面積で決まるなら、同じ建物でも面によって等級が変わってよいはずです。

堺市の西側は大阪湾に面しています。海からの風には塩分が含まれ、鉄部のさびを早めます。西を向いた手すりと、建物の陰になる東側の手すりが同じ状態でいるほうが、むしろ不自然です。海からの距離だけで決まらない事情は堺の外壁に出る塩害に書きました。

見積書に「鉄部塗装 素地調整 3種ケレン 一式」とだけ並んでいたら、聞いてみてほしいことがあります。

  • どの面を見て3種と判断したのか
  • さびの出ている面積を、どのくらいと見ているのか
  • 活膜を残す範囲と落とす範囲を、どこで分けるのか
  • さびの重い面だけ、別の等級で拾う予定はあるか
  • 手すりの下側や付け根など、しゃがまないと見えない箇所を数量に入れているか

鉄部の数量は、手すりや階段の側桁なら長さ、扉や点検口なら箇所数で拾うのが普通です。数量の欄が空のまま「一式」で通っている見積書については、内訳に何が並ぶべきかを別の記事で扱っています。

手すりを、手のひらでこすってみてください

粉が付けば塗膜が痩せています。ざらつけばさびが浮いています。指で押してぶよぶよと動く箇所があれば、そこはもう活膜ではありません。

写真を撮るなら、真横から1枚と、しゃがんで下から1枚。付け根と裏側にさびは集まります。

株式会社KYOEIは、大阪府堺市西区堀上緑町2-2-15から、堺市7区と大阪府南部で大規模修繕、外壁塗装、防水工事、雨漏り修理に伺っています。柏里第2住宅5・6号館外壁改修その他工事のような集合住宅の外壁改修が本業です。

手すりの写真が数枚あれば、3種で足りるのか、もっと落とす必要があるのかの見当はつきます。電話は072-349-3278です。